日本語教育能力検定試験の体験談を、というメールを頂きましたので、
もう十年も前のことですが、思い出しながら急きょ書いてみます。
日本語教師になるための勉強は、
想像していた学校文法の世界とは全く別のモノで、戸惑うばかりでした。
何も知らずに入った教室で、
日本語教師は、420時間の講義を受講していることが望ましいということを知って、
その教室が終わった後、420時間以上の受講ができる
いわゆる日本語教師養成校に通うことにしました。
そこでこの試験について、先生に伺ってみました。
その先生は、次のようにおっしゃいました。
この検定試験は、言語を学問として学んだことがない人にはたいへん難しい。
国語と日本語は違うけれど、日本語科を専攻した人は別にしても
国語の先生で「国語と日本語は違う。」と気づいた人が、最短距離にある。
他に英語でもロシア語でも、言語を専攻した人は、
言語の素養が身に付いているので、やはり、合格しやすい。
あなたには合格できませんよ、と言われたようで、むしろファイトが湧きました。
言語の素養が全く身についていない私ですので、どうすれば良いのか考えてみました。
では、言語の素養を身につけましょう。
古文が試験にでないまでも、多分、古文の知識と理解力は必要だろうと考えました。
高校生だったとき、古文が大嫌いでほとんど何も分かりませんでした。
紫式部と清少納言の区別も危ないほどの状態でしたので、
日本語教師の養成校に通いながら、
カルチャーセンターの『源氏物語』を受講することにしました。
ところが、途中から入ったので筋がさっぱりわかりません。
人間関係も分からないので、漫画『あさきゆめみし』を知人から借りて読みました。
漫画ですから、分かりやすく、筋が呑み込めて講義を楽しく聞くことができるようになりました。
文法の解説とかはなかったのですが、古文の世界に浸ることができました。
多分、現代日本語だけを理解しようと思っても、昔に遡る知識がなければ
理解できないだろうと考えました。
日本語がどのように変わってきたかを知るには、日本史の知識が必要だとも考えました。
日本史も学生時代を通して大嫌いで、
当時鎌倉時代と室町時代とどっちが先かと聞かれて答えられないほどでした。
そこで、これも漫画で行こうと考え、小学生が読む、小学館『日本の歴史』全20巻を、
養成校に通う電車の中で読みふけりました。
あと、NHKの教育テレビで、言語関係、日本の歴史、中国の歴史等の番組を
見るように心がけました。毎朝、テレビ番組をチェックするのです。
漢字は中国からきたもの。中国の歴史を知ることは、きっと役に立つだろうと思いました。
とは言っても、言語の素養がそんなことで身に付くとも思えません。
それで、放送大学の言語に関連ある講義を片っ端から勝手に受講することにしました。
受講といっても、テレビの前に座ってしっかり聞くのではなく、
他のことをしながら、聞き流していてOKということにしました。
聞き流していたつもりでも、何かと聞こえてはくるものです。
当時、パート的な仕事をしていましたし、何かと忙しかったのですが、
忙しいときの方が、がんばれるものです。
机の上に問題集をおいて、5分でも時間があれば問題を解くよう心がけました。
しかし、問題はあまりに難しくて、理解できないのがたくさんありました。
分からないまでも、そのとき一生懸命考えたことは、私の力になったように思えます。
私は音感が悪いので、、日本語高低アクセントを聞き取るのが大変で、
これはかなりハードに練習しましたね。
養成校で、音声学を繰り返し受講したりもしました。
合格したい!という一念で、努力していたあの当時のことを今も懐かしく思います。
いろいろ試みたことが直接試験の役に立ったかどうかわかりませんが、
日本語教師になってからは、よかったと思います。
日本語教師養成校を終了して数年後、大学院の修士課程に社会人入学したのですが、
分からないことが多いと痛感する日々でした。
今も分からないことが多いですね。
取り急ぎの乱文、すみません。 2003/
8/ 1 記
追記
ここ数年外国籍の方の合格者が出ているとのことです。
2003年度は、約60人の外国籍受験者があって、一桁(10人未満)合格していると聞きました。
|
|