日本語教師をしていると人に話すと、「何カ国語話せるの?」と聞かれたりします。
何カ国語も話せるなどと、そんなことは不可能です。
日本語教師の多くは、日本語だけを使って日本語を教えています。
その理由はというと、色々な考えがあるのですがーー。 |
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同じクラスに数カ国の学習者がいる場合、教える教師がその数カ国語を等しく
話せなければ不公平になります。そんなことは不可能です。 |
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言語というものは、言語間で意味・内容がきちんと対応しているとは、限らないのです。
例えば、『朝』という言葉と英語の morning とは、全く同じというわけではありません。
日本語の『朝』は、明るくなってきてからせいぜい10時ぐらいまで。
ところが英語の morning は、ちょうど日本語の『午前』に当たる言葉です。
日本で、午前11時半に「おはようございます。」といっておかしくないのは、芸能界くらい。
日本人の普通の生活では、遅くまで寝ていた人への嫌味といった感じになります。
英語では、午前11時半に Good morning ! といっても問題ありません。
「おはようございます。」を Good morning ! だと教えることに問題があるのです。
一番似た言葉を探して、少々変だけど、エイヤッと書いてあるのが辞書なのです。 |
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母語にいちいち翻訳して第2言語を考えるのではなく、学習中の言語をその言語で
考える『頭』を早く作ることで、早い進歩が望めます。 |
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学習者さんの母語を使いながらの日本語指導は、最初は楽に思えるかもしれませんが、
入門時に対訳を与え続けると、いつまでたっても対訳を求められて、
苦しくなることもあります。
日本語特有の表現・語彙などを、的確に即座に学習者さんに説明できるだけの力が
教師の側にあれば、それはそれでも良いかもしれませんがーー。
対訳を与える指導でも、徐々に日本語で指導するように、切り替えていった方が
良いかもしれません。
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日本語教師に資格はありません。
この資格というのは、免許といった方がよいかもしれませんが、『資格』がなければ
その職業につけないものをさしています。
例えば、小学校、中学校、高等学校の先生になるには、教職免許が必要となります。
日本語教師にこういった免許はありませんが、日本語教師になるための訓練はあります。 |
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大学の日本語科で勉強する。(日本語科と国文科は別のものですよ。) |
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大学で副専攻として日本語を選択する。 |
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民間の日本語教師養成校で420時間以上履修する。
この420時間とは、大学で日本語を副専攻した場合の履修時間です。 |
(4) |
日本語教育能力検定試験に合格する。
日本語教育能力検定試験は、一応の腕試しという感じではありますが、かなりの難関です。
今どうなっているかわからないのですが、6年くらい前は総受験者数の20%弱を合格させる
という変な試験でした。採用条件がこの試験に合格していることを挙げるところもあります。 |
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大学院でさらに勉強する。 |
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広い意味では、日本語教師とは日本語を母語としない人に日本語を教えている人。
狭く考えると、日本語を教える訓練を受けた人、あるいは指導経験を積んだ人だ
という記述を以前どこかで見たことがあるのですが、
日本語を教えている人は誰でも日本語教師だと思います・
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最近、「樹さんはどういう経歴ですか。」というご質問を受けました。
私は、大学の専攻は工学部だったのですが、
日本語教師になろうと考え、民間の日本語教師養成校で学び、
日本語教育能力検定試験に合格しました。
仕事に就いてから、仕事と並行して日本語教育関係の大学院修士課程を終了しました。
(03/02/15 記) |
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日本語教育能力検定試験問い合わせ先
財団法人 日本国際教育協会
事業部日本語・統一試験課 日本語教育能力検定試験係
〒153-8503 東京都目黒区駒場4-5-29
毎年、この試験は1月末に行われるのですが、
2003年度は、10月にも行われるという情報を得ました。
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